日記帳 2005-08


2005-08-19

実装・利用者としての JIS2004

 JIS X 0213:2004 はいやらしい規格である。一方の規格本文で包摂分離文字以外は変更していない(例示字形の変更に追随しなくてよい)としていながら、もう一方の解説で現実に実装が例示字形を参照して作られており、現実に JIS X O213:2000 が普及していない事実を指摘し(身も蓋もない話であるが)、実装者に例示字形の変更に追随することを期待している。

 規格の本体に忠実に従うのであれば包摂分離文字以外では JIS2000 のままで良いはずだが、それでは他の書体と乖離が生じてしまうし、しかも準公的な印刷標準字形と異なる。最終的には利用者側に問題のしわ寄せが来るというありがたくない状態となってしまう。

 このため書体作者の責任として、結局この期待に従うしかないのである。

 問題は今回の改正前にシステムフォントに Shift_JIS-2000 を実装した系(DR DOS/V、FreeDOS/V、OSASK など)が存在したことである。これらの環境ではシステムフォントが変更される羽目になったため、字体化けを生じることになった。

 多くのケースでは問題にはならないかもしれない。しかし真面目な話として Shift_JIS/EUC-JIS エンコードの、あるいはシステム外字を持つ環境のテキストファイルでは、文字セットを確定しないと本文校閲ができないことになってしまう(例: MacOS)。

 もちろん、MS-Windows 系や UNIX 系でも保存テキストに Shift_JIS/EUC-JIS-2000 を用いれば結果は同じである(書体変更では『意味』がない)。ISO 2022 の本則に従う(EUC 方言に従わない)なら、JIS2000 と JIS2004 を区別することが出来る(JIS X 0208 が JIS83 改正時 ISO で更新扱いできなかったことと同じ理由で別物として扱われる)が、これとて JIS X 0213 のエスケープシーケンスを認識するアプリケーションがあまりに少ないことから考えて、利用者として実用かどうか。

2005-08-18

IZMG16

 現在の課題文字。『か』(左半分の調整が必要)、『ふ』(バランス)など。で改良して公開(beta 4.6)。『ふ』は悪化のために戻したが、結局変える予定である。

2005-08-16

地震

 でした。実害は CD のケースひとつの角が割れたくらい(いつぞやの『本が雪崩』はない)。机が50ミリほどずれたぐらいで。

FONTX2/DISPV

 出水中ゴシック体16ドット(IZMG16)の対象環境である FONTX と DISPV が、作者の Lepton さんのサイトの消滅により入手が出来なくなったことが報告されました。

 私は転載条件について勘違いをしていたましたが、協議の結果水城珠洲さんが転載。感謝。

 追記。A HREF="http://www.hmsoft.co.jp/~lepton/">leptonさんのサイトが復活したとのこと。

IZMG16 beta 4.5

 公開。とはいえ再設計途上のβ5までの『つなぎ』。かなは『い』『か』『ふ』『な』など。こざとへん・おおざとなど修正。最近は誤字の修正よりも品質向上(対象環境以外への配慮を含む)のための修正が中心となりつつある。bdf 版は待ってください(変換が面倒なので)。でも形は前の bdf 版から大きく変わってしまったなぁ。

 柔らかなゴシック体という傾向が強くなってきた。まだすべての大きさで同様の字形を実装するに至っていない(とくにカタカナ)。

2005-08-06

明治三十一年四月改正の五号平仮名は後期五号

 ということを内田明氏が報告された。当該書体について私は論ずる立場にないが、恐らく氏の認識している通りであろうと思われる。つまり、故佐藤敬之輔氏が『ひらがな』で主張した『改正五号』は博文館のものではなく、築地活版による『後期五号』であるということである。

事の経緯

 この文章を読む方々は本件について全くご存じないであろうし、また内田氏の名誉のために書き記すべきと考えるので、当時の記憶を元に事の経緯を書きたい。

 まず、事の起こりは内田氏が『拡張Watanabe明朝』(Labo 123 32ドットの盗用事件により現在はXANO明朝となる)の仮名を民友社の五号(10.5 pt)活字からとったことにはじまる。その活字は漢字こそ築地活版のものであったが、仮名は秀英舎(今の大日本印刷)のものであった。当時は築地・秀英の混植が行われていたのである。

 そのことについてを、現存する会社の過去の書体を自己の書体の一部とするのは問題ではないかと指摘したため、氏は拡張Watanabe明朝の公開を停止された。(なお現在、東京築地活版と民友社は存在しない。これらは消滅から半世紀以上経っているため、かかる書体の権利は既に消滅したものと見做せる)

 問題はその後であろう。私が誤った論を展開したのである。具体的には『ひらがな』の論に従い、『改正五号』は博文館(現在の共同印刷)が元ではないかとし、それを強弁したことである。終いには書体には著作権がないではないか、等という始末であった。これらのことについては弁解の余地はない。謝っても許されないだろうが、内田明氏の名誉を傷つけたことについて深くお詫びをしたい。

 その後氏は活字の歴史について調査をされるようになり、さまざまな結果をものにされている。

教訓

 本件から得た私自身の教訓を書き記したいと思う。書体設計を行う立場としての倫理の提案は別に記すことにする。

 まず、判っていないことを知ることである。そうすれば変な論理を振りかざさなくてすむ。

 次に、本に書いてある事を鵜呑みにしないことである。現在活字の世界には――日本の活字は鯨尺を元にした――など訳の判らない伝説(嘘)が罷り通っている。このようなことを鵜呑みにせず、実証することが必要である。

書体設計の倫理の提案

 公衆へ頒布することを目的とした書体の設計・製作において、無用な問題を避けるために以下の倫理的規定を提案したい。

 まず、書体の覆刻・改刻は次のような条件を満たしたもののみで行うべきである。

 次に、可能な限り類似させないために、次の条件を満たすべきである。

 また、商標なども確認すべきである。某書体では商標権侵害(および模写による不正競争防止法違反)が公開停止の決め手となった。

 そして、可能な限り自分がしていることを公表すべきである。何も知らずに作業して、後になって元の盗用が発覚するなどというのは悲しすぎる。

 最後に、何らかの疑念を生じたときに躊躇なく公開を停止する、または疑問があるまま作業をしないこと、を挙げておく。

2005-08-02

他人用のかな

 を製作しようとしている。具体的には JIS2004 対応の TrueType 書体二つについて自分が使うために仮名を書き換えたいと考えている。作業は十月頃か?

 まず、内田明氏のXANO明朝。出水明朝L(IZLM)の仮名の設計の際に印刷局書体を元にし、のちに破棄したものがあるので、それを適用することを考えている。現在のXANO明朝の仮名は築地前期五号という非常に古いものであるため、使う文章を選ぶという問題がある(また、拗音・促音の位置が他のものと異なるという問題もある)。このため現代的な仮名を付けることで扱いやすいものとしたい。

 次に、希土類元素レアアース氏の和田研細丸ゴシック200x。日本国有鉄道の制定書体である、すみ丸ゴシック体(古い駅名標のあれである)を元にしたものを考えている。和田研明朝・角ゴシックには東風を元にした仮名が存在するが、丸ゴシックにはそのようなものがなかったのである。従って実用的な仮名が必要であろう。


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