日記帳 2007-10


2007-10-25

とりあえずツメ組に対する考え。

 一往考え方をまとめ。私は現在ある書体について、ツメ組はできないと考えている。出来るとしても数文字のロゴぐらいであるのではないか。理由はいくつかあって、

といったことが挙げられる。

 まず、書体設計がそもそも等幅であることが挙げられる。日本語、特に仮名は手書きであれば不定幅であるが、活字、写植やディジタルタイプは多くの場合漢字と同じバウンディングボックスで設計される。そもそもプロポーショナルピッチとして扱うことには無理がある。

 次に、設計上仮想ボディの内側まで他の文字が食い込むことは考えられていない。よくツメ組を支持する立場からは欧文書体は詰めているとの指摘があるものの、欧文書体はプロポーショナルピッチであってツメ組ではない(カーンドレターは例外である)。たとえプロポーショナルピッチであったとしても、仮想ボディの内側まで詰めると破綻するのは当たり前である。

 そして、日本語・漢語の場合、分かち書きがないため、視覚的には字間が語間の区切りに相当する。可読性は語間の区切りが明確化するほど良好になるから、文字間には遠心力が働く。つまり日本語組版ではベタ組かアケ組が基本となる(ツメ組は欧文書体で言うと語間スペースを詰めて単語同士をくっつけるようなものである)。

 ゆえに、ツメ組はデザインとしても可読性の観点からも良い組版とは考えられない。

2007-10-14

JIS彫刻書体: 中間成果物公開

 半角仮名も作成したので中間成果物を公開します。JIS彫刻書体中間成果物

 内容としてはFontForgeの編集形式であるsfdファイルと変換したTrueTypeフォント。CID・3次ベジェ曲線で作成しましたが、まだAdobeにIDの交付を申請していないのでOpenTypeファイルは含んでいません。でも下の画面はOTFだったり。

JIS彫刻書体OTFテスト

2007-10-10

JIS彫刻書体: カタカナ

JIS彫刻標準書体を太らせたもの

 とりあえず、カタカナ全文字作成。「ヂ」「ヅ」「ヰ」「ヱ」「ヵ」「ヶ」はでっち上げである。半角幅カタカナと半角幅ひらがな(Adobe-Japan1-3に含まれる)も作ったものの制御点がおかしいものがあるので見直す。半角幅文字を修正したら公開する予定。

 備忘メモ。JIS Z 890xの小書きかな(拗促音)は元の字の74%である。FontForgeの拡大縮小機能はとんでもないので、変形前は必ず制御点を引き出しておくこと。

2007-10-05

高解像度表示におけるタイポグラフィ

 この頃のLinux Zaurusのような高解像度表示ではより大きなフォントか必要であることを最近実感している。人間が長文を読む場合、最低でも物理サイズで8 pt以上の表示が必要となるが、これらのPDAのVGA画面は16ドットフォントは6 pt程度となる。つまり最低でも24ドットフォントで表示することが必要となる。

 結論から言うと、これらの表示にはアウトラインフォントの使用が適当である。32ドット以上のサイズは作ってもしょうがないのと、カラー液晶ではコントラスト低下の問題を伴うもののそれなりに表示出来るためである。逆に言うと、解像度が低いとか、モノクロだったりするとビットマップフォントでなければ実用に耐えない。

 とはいえ、コンピュータのユーザーインターフェースに適したアウトラインフォントというのは実は少ない。MS UIゴシックなどビットマップを使用しているものを除くと、せいぜいSH G30-Mやメイリオぐらいということになる。こいつらは印刷するとぼろぼろだが、ユーザーインターフェース表示に向いている。MacOS Xではグラフィックエンジンの改良と仮名等の差し替えによりそれなりの表示を得てはいるが、苦しいところがある。

 現状ディスプレイ表示の貧弱さを考えると、しばらくはフォント作成の方向はユーザーインターフェース向けが多くなるのではないかと読んでいる。

2007-10-03

IPAフォント

 IPAフォントのライセンスが改訂され、フォント単体の配布が行われるようになった。Debianなどではライセンスが妥当なものであるか議論があるだろうが、とりあえず喜ばしいことである。

 PDFでの使用も自由とは。JDUGのインストールマニュアルへの使用を検討しようか()。

 私は当事者じゃなかったものの、この書体が生まれた前後は今でも良く覚えている。盗用された側がわざわざ再配布に対応したとか、IPAにフォントを提供したとか前代未聞の出来事が続いたからである。

 早速入手してみると……JIS X 0213:2004対応。JIS2004対応が増えつつあることを示しているようでうれしい。


Yu Izumi@Izumi Labo,2002-2007
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