海外のオペレーティングシステムを日本語化する際、まず重要なのは日本語の表示と入力ということは、多くの方々が認めると思います。ここでフリーなフォントという部分へ目を向けると、漢字という障害があるためか種類があまりないことがわかります。
確かに平木敬太郎さんによる電脳フォントなど、かつて市販されていたフォントが無料で公開されるようになったりと動きはあります。しかしこれらは商用利用などに制限があるため、公共性の観点からはあまり良いとはいえません。
それでもいくらかの識者(好事家ともいう)たちの手によって、フリーなフォントが作られてきています。
ここでは DR DOS や FreeDOS などのフリーなオペレーティングシステムで無償で利用できるフォント「出水ビットマップフォントシリーズ」(別名:出水書体、出水フォント)について解説していきたいと思います。
伊藤隆幸さんや前田剛さん、楢方秋豆さんなどの手によって DR DOS の日本語化が進められて来ましたが、それらではいわゆる jiskan16(JIS X 9051:1984「表示装置用 16 ドット字形」をX Window System に移植したもの)を変換したものか、jiskan16 を imamura さんが JIS2000 に拡張した jiskan16-2000 を伊藤隆幸さんが FONTX2 形式へ変換したものを利用していました。(今は私が変換したものがここにあります)
この jiskan16 はあまり良いフォントではないことは御存じの通りです(デザインは写研と聞きましたが…)。詳しくは後で述べますが、可読性が低いフォントでした。そこで私は K14(橘フォントともいう)の移植版に空白を入れて使っていましたが、半角罫線を出すために伊藤さんの SONY フォント for FONTX2 と併用したため、漢字より半角フォントが大きいというアンバランスなことになってしまいました。そこでこれでは駄目だと感じ、新たにフォントを作ることにしたのです。
当時、jiskan16 に代わる FONTX2 用の 16 ドットフォントはなく、先程述べたように K14 に空白を入れて使うぐらいしかありませんでした。
というのは、古川泰之さんによって東雲フォントが開発されたのは知っていましたが、手元にまともなコンバータがなく使うことができなかったためです。
その後、平木敬太郎さんがかつて「タケル」で販売されていた「電脳フォント」シリーズを X68000 版(FONTX2 版や MS-Windows 3.1 版もあった)を公開されていることから、FONTX2 版での公開を駄目で元々とお願いをし、平木さんは快く引き受けてくださりました(入手はここから)。この場でお礼申し上げます。
また、東風フォント(現在盗用騒動で開発・公開が終了)の組み込みビットマップとして東雲フォントが MS-Windows で使えるようになったため、当時入手できたまともでないコンバータと wfontx という MS-Windows のフォントを抜き出すツールを併用して東雲フォントを移植し、/efont/ の許可を得て公開しました。なお、現在は自作のコンバータが動くようになったのでそれを使っています(今も相当数のコンバータがまともに動かないのは事実です)。
しかしながら、これらのフォントを開発前に移植できたとしても、これらが新しい JIS2000(JIS X 0213:2000)に対応していないことなどから、結局一から作っていただろうと思っています。
jiskan16 は現在 X-Window System のコアディストリビューションに入っているため UNIX では広く使われていますが、私が思うにいくつか欠点があります。下にあげてみます。
まず、16 ドットをフルに使っているため、行間がない環境では隣とつながってしまうことがあげられます。たとえば「す」を並べてみてください。何が表示されているのか良くわかりません(JIS の情報処理ハンドブックにはドットを開けるように書いてある)。次に線幅が 1.5 ドットであることがあげられます。これはモノクロ液晶ディスプレイで使う際は便利かもしれませんが(実際 J-3100 や PC-98NOTE などのノートパソコンではそのようなフォントがつまれています)、普通の CRT ディスプレイでは太く表示されてあまり美しくありません。
一方 K14 は橘フォントと呼ばれ、橘浩志さんが学生時代一人で作られたことは有名なエピソードです。しかしそもそもこのフォントは 14 ドット(バウンディングボックスは 幅13、高14)フォントであり、これを 16 ドットフォントの代用として使うことには無理があります。たとえば、はじめから文字の間に空白があるため、これに 2 ドットの空白を加えると妙に間延びした印象を受けます(文字間の空きが3ドットになりサイズに対する空白が大きくなりすぎる)。したがってビットマップフォントは作者が意図したサイズで使うべきだと考えます。また K14 はスクリーニングされていないため、黒々としていることも挙げられます。なお、この問題は「東雲明朝 14 ドット」では解決しているので、あえて述べる必要はないのかもしれません。(東雲明朝の 14 ドットは、橘フォントをスクリーニングしたものです)
現在作っているフォントは次の通りです。フォントのダウンロードはこちらからお願いします。
出水書体の 16/19 ドット半角フォントシリーズは、現在のところ、罫線が二重罫線ではない、円記号がバックスラッシュ(\)であるなど、OADGのDOSと異なる部分が存在します(JDUG に公開されている起動ディスクに関しては準拠している)。その点をご理解の上ご利用ください。
半角 Courier 体です。明朝体と組み合わせるとよいでしょう。
半角 Futura Light です。ゴシックなどと組み合わせるとよいでしょう。
出水書体の 16 ドット全角フォントは現在のところゴシック体の改刻を中心に行っており、現在のところすべての文字に関して字形が流動的です。何か提案がありましたらご教授ください。
出水ゴシック16ドットの第一・二面対応版です。英字などをFutura LightからUniversに変更しました。今後細かい訂正をし、完成版にする予定です。bdf版は変換こそしましたが、一切検証していません。また、FONTX2・bdf版のβ3には19/16ドットUnivers ANKフォントが付属しています。 なお、このフォントは聖人さんによって OSASK へ移植されています(実装水準3らしい)。
出水明朝16ドットです。未作成部分は暫定的に出水ゴシック16ドットを使用しています。汚いのでもう一度作成し直しています。
教科書体16ドットは第一水準漢字に着手します。かなは改刻しましたが、まだ充分とはいえません。
伊藤隆幸さん原作のゴカール体かなフォントを移植したものです。「ゴカール体」は角ゴシックと組みあわせる書体なので、漢字は出水ゴシックのものを利用していました。
その後「ゴカール」体フォントはもともと写研の商品名であり、不正競争防止法で言う著名な商品表示に含まれると考えられると判断し、従って公開を続けることに問題を感じ、公開を停止しました。
ここでなぜかなを 98 の外字(USKCG16.SYS 形式)にするかというと、私が PC-98 互換機の MARU98 で使いたい(正確にいえば、Browser Returns 98 という PC-98 用の WWW ブラウザでこのフォントを使いたい)ためです。
この出水ビットマップフォントの各ビットマップフォントのサイズは、英字等をのぞき上下左右をフォントのサイズより 1 ドット小さくしています(8 ドットを除く)。これは他の文字とくっつかないようにするためです。
また、横線については可能な限り最上位ラインにならないようにし、横棒と交差している縦棒はなるべく 2 ドット以上上に突き出るようにしています。これは文字のバランスを良くするためです。
初期のデザインでは横棒のスクリーニングを下のように途中で重ねる EPSON や富士通ライクな方法をとっていましたが、最近のデザインでは画数を減らす方向で行っています。
点画省略は各部分の優先度を付け、その順番が低いものから省略することにしています。下の例では「貴」の上の「中」の優先度が高く、「貝」のもっとも上の部分が低くなっているためそこが省略されています。
余談。漢字の読むスピードは画数が多いほど速くなるそうです。一時の朝日新聞の点画省略は「可読性をあげるため」ではなく「可読性をさげる」ためだったのですね(笑)。そこから考えると当用漢字表の対象は書き文字に限定されるべきだったのでしょう。
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さる 2000 年 1 月 20 日、当時の通商産業省によって新しい情報交換用漢字符号系、JIS X 0213 が定められました。これは漢字の詰め込みであり、しかも Shift JIS での使用を考慮していなかった情報交換用漢字符号系−補助漢字:JIS X 0212 及び、情報交換用漢字符号系 JIS X 0208 の 83 年改正の混乱への反省などから作られた文字集合です。
出水書体では私の個人的理由(広東語を使うため)及び、jiskan16-2000 以外に 16 ドットフォントがないという現状から、対応することにしました。今のところは目途が立っていませんが、全文字対応するために作成が続いていました。
出水ゴシック16ドットは現在、JIS X 0213:2004の全文字を作成し、利用可能です。今後、文字の改良を行い、正式に完成させる予定です。しかし、JIS200xは広東語の表記には少々文字が足りなかったり。
今後 DR Open Font Project の名前を廃し、開発されているフォントを「出水ビットマップフォント」、もしくは「出水フォント」、「出水書体」と呼ぶことにします。
これはプロジェクトがすでに DR DOS と関係がなくなってきていること、他の環境に移植されつつあり、作者自身も別の環境でも使っていることから、不適当ではないかと感じたためです。
名称の由来ですが、私の本名から取ったものです。
出水ビットマップフォントシリーズに関するあらゆる権利は、特定の個人/団体の形で保持することを主張しません。現状では書体に著作権は認められていませんが(プログラムの権利と主張する向きもあるが、現状ではかなり疑問が残る)、たとえ未来に書体の著作権が認められた場合でもその著作権がすべてのユーザに共有され、自由に流通・改変されることを希望します。つまりパブリックドメインに準ずることを宣言します。なお、著作権以外でもその他の権利の存在がありうるかもしれませんが、権利の行使は可能な限り控えさせていただきます。
追記。改正不正競争防止法第2条第1項第1号によると、書体を商品等表示と考えることで、無期限(ちなみによく知られている3号型は3年)に保護されるのではないかと考えられます。なおこの条項は旧不正競争防止法第1条第1項第1号に相当するので昭和十年以来有効です。
また、このフォントが商用利用・非営利利用を問わず自己責任の下に利用されることを希望します。その際、商品の明細等に出水書体を使用した旨の記載の義務は存在しませんし(ただし、改変部分などに権利等を主張する場合は、その及ぶ範囲を明示しておかないとならないでしょう)、私自身への連絡の義務はありません。ただし、私自身は使用書体の記載は、公共性の観点から考えて望ましいと考えていますし、私自身への利用の報告は今後の開発に役立てるのに重要だと考えています。
なお、フォントの改変(特に未完成)や移植については連絡されることを希望します。今後の更新ごとに連絡したいと考えていますので。
希望事項は、義務ではなくあくまで「希望」です。この項目および非記載の全ての事柄は公共の福祉に反しない限り守る義務は全く存在しませんし、私はその限りにおいて諸権利の行使は一切しません(個人的な意見・希望は言うかもしれませんが、それも義務ではありません)。
原則としてノーサポートであることを認めてから使用してください。つまりサポートはあってないようなものです。
DOS/Vへのインストールについては 日本 DR DOS ユーザー会(http://drdos.at.infoseek.co.jp/) の掲示板へおねがいします。bdf版に関しては私は何もアドバイスできません。
なお、デザイン上の問題や、さまざまな事柄については私個人へ連絡されるようおねがいします。
フォントを作っていて、現在・今後必要だな、と思っていることを少し。