日記帳 2007-03


2007-03-25

写研ってよいですか?

 なんだか写研の信者みたいに言われてるなぁ。私はOASYS使いだったせいもあって、モトヤ明朝・ゴシックのバランス感覚が一番好きなんですが(やや古いけど)。そんなに写研ってよいですか?

 写研テイストとはよく言うけど、石井明朝は弱々しいし、他の石井書体とて毛筆趣味に引張られているから、そんなにいいとは思わない(例えば小説組には使えない)。

 書体だけ見れば、リュウミンと石井明朝は同じ程度の品位(あとは好みの問題です)。本文用ゴシックだと巧拙が結構出ますが、それとて中ゴシックBBBやリョービゴシックが決定的に使えない訳じゃない。必要があって使いたければ写植屋や活版屋に頼めばいい。わざわざ苦労して自分の所でしか使えないフォントを作るくらいなら、私はそうする。

 私の指摘した案件が写研が多いのは、たまたま80年代から90年代前半にかけてが写研の時代で、印刷物から模倣しやすい状態だっただけのことです。今後はリコーやモリサワからの盗用が増えてくると予想しています。

 はっきり言って我々の目が写研にならされてるんだと思います。それゆえに文字をデザインするものとして、石井ゴシックは石井明朝体を元にしていて女性的だとか、龍宋体の仮名を自分で作るなら『る』の形をこうする、っていうように、どこが良いか悪いか相対的に評価する目を持つ努力をしないと、なんかの信者になってしまいます。

2007-03-24

某あんちっくその後

 某あんちっくの公開を停止された。今後は築地やもじくみがなをベースに作り直すとのこと。静かに見守っていこうと考えている。写研に連絡はするが(過去の侵害事例もある)、もう必要がないためメールは公開しない。

 あくまで参考までに。普通、書体製作において他の書体の使用状況を見ることはよく行われる。それは傾向(仮名の漢字に対する大きさなど)を掴むことが目的であり、模倣することが目的ではない。横に他人の実例を置いて原図を描くなどまずやらない。

 かつてはそういうことが行われた(例えば石井明朝体は築地が存続していた頃に模倣したものだし、岩田にしたところで似たようなものである)が、現在では認められないだろう。

 現時点で例外は築地など権利が切れた書体の復刻であろう。あるいは自家用書体の作成か。

 実は書体の復刻ぐらい難しいことはない。特に金属活字の復刻はただ単純にトレースするだけではうまくいかないのである。

 その意味では作者氏はあそこまでの精度で目コピーしている(褒めてるんだか貶してるんだか)。だから、期待しよう。

2007-03-23

某あんちっく(なんとかもどき)

 について、写研書体の盗用であることを確認し、作者とメールをやりとりしたが、最後のメール以来、返事はない(追記:公開停止)。法的な問題を指摘したにもかかわらずにである。司法の場に耐えるためにはより詳細な検討が必要であるが、考え方として間違いはないだろう。

 そのため、この事実を公表することにした。「アンチック書体盗用について

 とりあえずは写研に連絡を取ろうと考えている。また、メールの内容を公開することもやぶさかではない。反社会的行為とは対決しなければならない。

2007-03-16

こぶりなゴシック

 ご存じと思うが、こぶりなゴシックのOpenType版が発売された。こぶりなゴシックとは言っても、実態はほとんどヒラギノ角ゴシック体の専用かなみたいなもので、正確に言うなら、かなと約物の相当数が独自で、半角かなや漢字はヒラギノそのままである。従属欧文はヒラギノから調整されている形跡がある。小学館明朝などと同じような作り方をしたようである。

 ヒラギノ角ゴは良くも悪くもモダンゴシックにオールドスタイルを取り入れた書体であるが、ゴシック4550のような移行期スタイルとは異なる。仮名の形などは明らかにモダンであるが、記号化を押さえて普通であろうとしている。それゆえかどうか知らないが、漢字などはフトコロはモダンゴシックにしては狭く、オールドゴシックと比べてもそれほど大きな違いはない。

 そのため、仮名をオールドゴシックのものとしても違和感がない。和文書体は仮名さえ変われば印象ががらりと変わる好例である。

 しかし、明らかに石井ゴシック体を意識したデザインはどうなのだろう。「ふ」など大抵の文字が石井ゴシック体の形に近く、一見石井ゴシック体と異なるバランスの悪い「そ」なども幼児用かな(KMGAKLEなど)に近かったりするのである。

 彼らが作った、本蘭明朝とヒラギノ明朝が似ることはある意味で仕方ないが、ここまで意図して近づけるべきかどうかは倫理的に疑問である。楽曲の耳コピーすら著作権に抵触するのにも関わらず、著作権がない書体でこういう物が許容されうるのか、どうなのか。『なんとかもどき』などにも共通する問題である。

 追記。こぶりなと石井は似てはいるが、明らかに別のものである。言い方を変えれば明朝体かなを元にしているが、元にした明朝体が違い、味付けを似せている。それゆえに雰囲気が似ている程度であって別物である。過去に雑誌にこぶりなの原字の試行錯誤が掲載されていたが、大きく異なっていた(『お』が中ゴシックBBBみたいだった)と記憶している。どんな経緯があったのだろうか。ちなみに、こぶりなの共同開発元である凸版は独自のゴシック体を持っており、それと石井ゴシックとの類似性を考えれば別段不思議ではないかもしれない。

2007-03-01

IZMG16 final beta(β6)

 をFONTX2版、bdf版ともリリース。フリーズです。Ver.1リリースまでデザインの大幅な改変はもう行わず、バグ取りと数ドット以内の微調整のみを実施します。

 追記: 『つ』のデザインの微調整が必要なような気がしますが、Ver.1に取り込みます。

2007-02-24

IZMG16

 IZMG16の魚偏の更新を実施。次は馬偏の更新する予定。仮名の更新はここまで。というか、ここまで汚かったら更新せざるを得ない。

 IZMG16の次はIZLG24である。そしてIZLM16、IZLM24と続く。……絶対終わらない。

2007-02-20

TTF化

 tenkさんのfnx2dynaは24ドットとその倍数のみcb2ttでアウトラインを取れるビットマップを吐き出すようである。したがって、16ドットでは24との最小公倍数である48ドットに伸張する必要がある。また、fnx2dynaはANCフォントの解釈がおかしく、16*8ドットANKフォントではベースラインが3ドットほど下になってしまう(その結果下が欠損)。この部分についてはfontforgeで4倍拡大bdfをトレースした。

 また、ttfstubはcb2ttjの内部コードで言うと0-8835の範囲のTTFファイルを書き出すが、JIS2004における最後の文字はShift_JISで0xfcf4、cb2ttjの番号だと11271となり範囲外である。そのためjiskan24-2003でやったように一面と二面に分けて処理した。Unicodeテーブルを考えなければ再コンパイルすればいいだけなのだが……(コンパイラ入れるのが面倒)。

 もっとも、こうやって作ってもClearTypeが有効になっていると滲んでしょうがない……。やはり埋め込みビットマップは必要か。

2007-02-21

メイリオにおける最適化

 昨年末になってしまったが、MS-Windows Vistaがリリースされた。新標準書体『メイリオ』であるが、結論から言おう。最適化が済んでいない。

 まず、縦書きは使えない。左右への乱れて見える。書体が横線を基準としているようである。つまり欧文書体の設計である。そのため上下方向は比較的まとまって見えるものの、左右方向はあまり考慮されていないようである。

 次に、小さいサイズでの最適化は、それほどなされていない。たしかに、『書』などの横画が省略される様子は認められるが、ビットマップフォントほどの最適化はされていない。逆にコントラストが下がって可読性が低下しているように思われる。一見綺麗だが読みづらいのである。

 また、巷では斜体がかからないことが問題とされているようであるが、これは設計側が正しい。日本語本文書体に斜体の活字は私の知る限り存在したことがなく、斜体が生まれたのは写真植字の光学レンズによる変形が最初であり、スーシャなどの斜体書体は存在したもののディスプレイタイプであった。本文まで使われるようになったのは専用ワープロからであろう。極論、ワープロに解決問題的に作られた悪しき伝統である(元は欧文用に作られた機能を日本語に適用しただけ)。正方で設計された書体を変形されることは作者にとって傍迷惑である(ツメ組なんかもそう)。

 最後に、やはり設計がスクリーンフォントであるためか、印刷特性はあまり芳しくない。特に仮名の横画が大抵直線であるのがやたらと目立つ。とりわけ『か』、『て』あたりである。私なら右上がり気味に設計するが、わざわざ直線に設計したというのは、ClearTypeの小さいサイズの最適化のためなのだろうか。

2007-02-18

MS書体のバージョンアップ

 マイクロソフトのJIS2004 対応 MS ゴシック & MS 明朝フォントパッケージについてというページからMS書体(Ver.5)のインストールが出来るとのことで、インストール。しかし、NLSがそのままなのでShift_JIS-2004になるわけがなく、中途半端にJIS97の文字セットBになった環境になる。自分の環境は富士通文字セット(Adobe-Japan1-2 Add)がベースとなっているため、いっそう中途半端に見える。

 中途半端さは否めないものの、文字がないよりははるかにマシである。NLSの交換が必要だと思う。そのためにメーカー外字を放棄して欲しいものである。

2007-02-10

近況

 こそこそとIZMG16の更新ばかりでこっちに手が回らなかった。間α版を葬り去るためJIS97版を作ったりしていた(要は抜粋版)。現在の内部バージョンはβ5.9。今やっている仮名の微調整が終わればファイナルベータにする。

 泉鳳・泉燕計画は中止。前者は原典の洗い出しが不充分であるため、後者はすでに類似の計画があるため中止とした。

 なお、freemailのサービス停止によりfreemail.ne.jp宛は無効となったよう。しばらくはdrdos用のアドレスに送ってください。


Yu Izumi@Izumi Labo,2002-2007
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